2024.4.9
- 開催報告
シンポジウム|自動運転バスのコストコントロール(3/27開催)資料付き
令和6年3月27日(水)、地域を次世代につなぐマイモビリティ共創拠点は、自動運転の実用化事業化において重要となる自動運転バス事業のコスト低減における現状と将来的な課題をテーマとしたシンポジウムをオンラインにて開催しました。
本拠点で実現を目指す超移動社会において、中心的な交通インフラとして期待されるのが公共乗合バス事業です。これを“次世代につなぐ”持続可能なものにするためには、コストを下げたうえで、高い収益を生み出すビジネスモデルが必要となります。
そこで本シンポジウムでは、法実務家、交通工学の研究者、そしてバス事業者という複数の視点から、自動運転という先進技術や車両保有方法の工夫が、いかに事業コストの低減に資するかについて考えました。
まず、公共バス事業に関する法律や経費構造など、自動運転バス事業を考える上での前提知識や検討のポイントについて、研究開発テーマ5-2のメンバーである友近 直寛(名古屋大学 特任准教授/弁護士)が講演しました。
現状、公共乗合バス事業の支出経費で最も多いのは人件費であり、その次が車両保有費用(車両修繕費・車両償却費)であることを統計資料から示したうえで、それぞれのコストを低減するための方法として、コスト1位の人件費に対しては自動運転の導入が、コスト2位の車両保有費用には事業者の車両保有の方法そのものを見直すことが、それぞれ効果的ではないかと論じました。
次に、地域交通サービスの利用者の少ない地方部や中山間地域でも持続可能なサービスの導入や維持を可能にする取組みとして現在検討中の“公共財プラットフォーム”について、研究開発課題2グループリーダーである三輪 富生(名古屋大学 准教授)が講演しました。
自動運転車を用いた公共交通サービスに必要なハードウェアやソフトウェアを事業者が個別に調達するのではなく、これらを保有する基盤である公共財プラットフォームから借り受けることで、トータルでかかるコストを低減させ、サービスの持続可能性を向上させる仕組みについて、海外における類似の事例との比較を交えて紹介しました。
講演の部の最後には、自動運転バス事業に取り組むBOLDLY株式会社の代表取締役社長兼CEOの佐治 友基氏より、自動運転バスによる公共交通サービスがビジネスとして成り立つための取組みを、これまでの実績を踏まえて講演いただきました。
単なる車両や運行管理システムの販売ではなく、永続できるビジネスモデルにするために自治体や地域住民などと協力して取り組んできたこと、たとえばふるさと納税などを活用した運賃収入以外の財源の確保や、運行に必要な仕事をその地域に移管することで雇用を生み出すなど、地域で公共交通を支える仕組みについて紹介し、自動運転バスの普及のために今必要なことをお話しいただきました。
最後のパネルディスカッションでは、友近特任准教授がモデレーターを務め、三輪准教授と佐治氏がパネリストとして登壇し、これまでの講演を踏まえて、自動運転バス事業の今後について議論しました。たとえば、運行にかかる人員の一部を地元住民がパートタイマーで担うことで、人件費の低減だけでなく、地域の産業と密着した事業となる可能性があることや、市区町村よりも広いエリアをカバーする公共財プラットフォームを構築することで、地域特性に合わせながらもスケールメリットを効かせられる可能性があることなどの意見が交わされました。
- 開催日時
2024年3月27日(水)14:00~17:00
- 開催方法
Zoomウェビナー(参加費無料)
- 共 催
地域を次世代につなぐマイモビリティ共創拠点(名古屋大学)、
名古屋大学 未来社会創造機構 モビリティ社会研究所
- 後 援
松田綜合法律事務所