拠点長挨拶

国立大学法人東海国立大学機構
名古屋大学 未来社会創造機構
モビリティ社会研究所
教授森川 ⾼⾏

みんなの「⾏きたい」「会いたい」「参加したい」をかなえる超移動社会

人類は太古から移動することで活動機会を増し、豊かさを得てきました。そして近代の移動システムは身体における循環器と言えます。酸素や栄養素を身体の隅々まで届ける循環器の機能不全が深刻な病気をもたらすように、移動システムは国土や地域の生命線であります。そして現在のわが国の日常生活圏内での移動の実態を見ると、東京や京阪神の都市圏以外はマイカー移動が「当たり前」であり、それ以外の移動手段が乏しく、マイカーで移動できない人々の生活の質(QOL)が置き去りにされています。さらに、地域の公共交通の利用者減が交通事業者の経営状況を悪化させ、値上げや便数削減などのサービス低下をもたらし、さらに利用者を減らすという悪循環も生じています。

この課題に正面から取り組むことが本拠点の使命と考えています。10~20年後に達成すべき未来の姿(ビジョン)を、『みんなの「行きたい」「会いたい」「参加したい」をかなえる超移動社会』と設定しました。「超移動社会」という造語は、「電気抵抗がゼロになる超電導のように、移動抵抗が削減されて誰もがストレスなく快適に移動でき、渋滞・事故・環境負荷などを含む社会的コストも最小化されている社会」と定義しました。本拠点で対象とする移動は、日常的生活圏内すなわち「地域モビリティ」です。地域モビリティを革新し、それを維持していくためには、自動運転などの先進技術を活用して低コストで高品質のサービスを提供するとともに、地域公共交通の採算性問題を覆すビジネスモデルチェンジが必要です。さらに、移動の問題を自分ごとと捉え、自分たち(地域)も積極的に関与する意識改革も重要と考え、地域モビリティの自分ごと化を「マイモビリティ」と名付けて拠点名に用いました。

このように、地域のマイカー依存をマイモビリティ化し、技術と制度の改革によって超移動社会を築くことで地域を次世代につないでいく研究開発構想を立ち上げました。地域モビリティに関する本ビジョンを達成するためには、まちづくり、運輸・交通、ICT、ライフスタイルなど幅広い分野による共創が重要と考えています。関係する皆様のご協力を賜れば幸いです。

森川高行